坊主の話(1)

沙耶ちゃんシリーズ。
【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ4【友人・知人】

223 :まこと ◆T4X5erZs1g:2008/08/01(金) 00:48:31 id:lOTiqnxg0
いまはもう30代も後半に突入している俺ですが、
20代の終わりごろに、正規の仕事を辞めてフリーターしてた頃があったんだ。
夜のほうがいい金になるんで、コンビニの深夜アルバイトをしてたりしてね。

ある大手に勤めていた時のこと。
俺の入る23時からのシフトには、主に梶っていう体育大生と、沙耶っていう女子大生がいたんだ。
梶はまあ鍛えてるだけあって見た目からごついヤツで、性格も陽気だった。
一方で沙耶ちゃんは、陰気ってわけじゃないが、無口で会話は弾まなかった。顔はめちゃめちゃ可愛かったんだけどね。
朝までの俺たちと違って、沙耶ちゃんは0時上がりだった。
近くに住んでるらしかったけど、なんとなく心配ではあった。
若い女の子だし。梶もいつも「気をつけて帰れよ」って声かけてたな。

たしか、バイトを始めて半年ぐらいの頃だったと思う。
夕方のシフトのヤツが欠勤したとかで、俺にヘルプの要請が来たのよ。17時から0時まで。
梶と沙耶ちゃんはいつもどおりだったから、その日は沙耶ちゃんと同時に退勤することになったわけね。
一緒に店は出たんだけど、改めて『送ってくわ』ってのもなんか言いづらかったんで、
彼女のあとをついて歩いたんだわ。逆方向だったんだけどww

ちょっと歩くと左手に公園、つか、グランドがある。なんでか彼女、その敷地に入ってく。
入り口は一つしかないから、中を突っ切って近道するとも考えられないんだが。
グランドの一角に、トイレと雑草にまみれたブランコがあった。
『ああ、トイレか』と思って、グランドの入り口で立ち止まって待った。
だけど彼女、ブランコに行くんだ。2つある右側に座って、なんつーか・・・アンニュイな雰囲気を漂わせてる。
思い切ってそばに行って聞いてみた。
「何してんの?帰らんの?」
そしたらさあ彼女、隣りのブランコを見ながら言うんだよ。
「この子と話をしてあげないと、淋しがって他の子どもを連れて行っちゃうから」
誰も乗ってないんだけどねえ、そのブランコ。
でもまあ俺も、『沙耶ちゃんって見える人だったんだな』ぐらいで納得した。
ほら、こんな板に来てるぐらいだからwww


224 :まこと ◆T4X5erZs1g:2008/08/01(金) 00:50:57 id:lOTiqnxg0
面倒なんで、後は会話形式にさせてもらうな。
「何歳ぐらいの子どもよ?男?」
「小学5年生・・・って、何歳?男の子だよ」
「なんで死んだの?交通事故?」
「ううん・・・池に落ちたんだって・・・」
沙耶ちゃんの通訳によると、その坊主は母子家庭で、母親も夜遅くまで仕事だったようだ。
ある晩、1人で留守番をしてた坊主は、近所の沼にザリガニを取りに行こうと思いついた。
昼間にでかい蟇蛙をつかまえていたんで、エサにすればかなりの釣果が期待できるはずだった。
泥に足を取られて沈んだ坊主の体は、数日浮き上がることもできなかったらしい・・・

俺は思わず、空いているほうのブランコに向かって言った。
「ドジだなあ坊主(笑)」
すると右腕のあたりから、子ども特有の甲高い声が聞こえた。
「しね」
全身に鳥肌が立ったな。
沙耶ちゃんが慌てた様子で、俺の右腕にしがみついてきた。
そのまま公園の外に引っ張っていかれて、真剣に叱られたよ。
意外にいい人だね、彼女。
職なしでごく潰しの俺なんか、憑り殺されようが誰も悲しまないんだがww

幸いというか、坊主は俺にも公園利用者にも何もしなかった。
沙耶ちゃんが言うには、それ以来姿が消えたらしい。
いまでもたまに花を供えてるのは、恥ずかしいから内緒な。