人のこない山道(2)

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それで道具を片付けてると、何か下の様子が変なんだ。
犬の鳴き声、数人の気配、声。
畑をはさんでるとはいえ、ここは小高い山になってて、下の様子を月明かりで見る事が出来た。
後から分かったんだが、今書く男2人、女2人の4人の男女。こいつらは家族。
女と男の1人づつが、犬の首輪に紐を巻き手に持ってる。残りの2人は電灯と棒を持っている。
犬は首輪に慣れてないみたいなんだが、2人はそれにかまわず犬を引っ張って行く。
意味が分からんかった。が、凄く異様な風景だった。
こっちが先に来てたんで、相手は気づいてないんだろう。全くこっちには気づいてる様子がない。
そいつらは少し先まで犬を引っ張って行った。角度的にこっちからは見えないし、離れてしまった。
俺は女に言った。
「あいつら何者か、ちょっと見に行かない?」
結局、女は嫌がってたんだけどさ、
このまま帰ったらずっと後悔するとか、一生に一回はこういう経験もしたほうがいいとか、
少し確認したらすぐ帰るからとか言って、強引に説き伏せたんだけど、
今思えば、やめりゃ良かったよ。
>95はここで帰ったんだろ?正解だよ。

県名は言えんが、これである程度は分かるかも。
ここのまわりはサトウキビ畑だったんで、屈んで歩けばかなり身を隠せるんだよ。
女と一緒に屈んで歩いていくと、マジ最悪の光景が。思い出すと、今でも涙出てくるわ。


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犬の首輪に2つ付いてる紐を2人で引っ張るだろ。犬は動けないわな。
で、残りの2人が犬の頭を殴る。犬の声はそんなに聞こえなかった。
そして、すでに命はないはずなのに痙攣してる犬の首輪についてる紐を持ち、木に吊るす。
ナイフで体を切って血を出す。
うわー、やべーよこいつら。予想してなかったもんを見たときって、身体が動かない。
心臓もばくばくいってるのが、相手に聞こえるんじゃないかとか、馬鹿なことも考えてしまう。
もう、引き返すとかではなく、こいつらがいなくなるのを待たないと動けなかった。
なのにっ、女がもどしやがったんだよ。
静かな夜に人間の出す音って物凄く目立つ。しかもずっと「げーっ」とか隣でやってるの。
「誰か?」
当然相手にも聞こえてるんで、俺と女は男2人にあっけなく見つかってしまう。
本当に怖い目にあったことがある人いるか?
俺が弱かっただけかもしれんが、身体が震えるの。ガタガタガタガタって。膝にも力入らないし。
「お前ら、どこの奴らだ!」
年配のおじさんに顔に電灯を当てられながら聞かれた。
こんな時って、正直言って今までは俺、口は達者な方だと思ってたのに、何にも浮かんでこない。
「お前らは先に家に行ってろ」
おじさんは家族にそう言うと、俺にこう言った。
「おじさんの家近いし、ちょっと送ってくれんか」
俺に問うのでは無く、強制的な口調。
ここで強引にでも断っておけば、まだ間に合ったのかも知れない。が、俺は彼を家へと送ってしまう。

車の中で女はぐったりして動かない。というより、ショックなもん見たせいか正常な状態ではない。
彼は俺に色々聞いてきた。印象に残ってるのが、「お前は何処に住んでるのか」という質問。
とにかくしつこくこのことを先に聞いてきた。
俺はとりあえずも、本当とは全然地名を言ったのだが、彼は俺が地元じゃないということで、かなり安心したようだった。

彼の家は、そこから10分くらいのところにあるハイツ内の大きな家だった。
俺はとにかく帰りたかった。だが、彼は俺に会わせたい人がいると言う。
彼と一言話してから帰ってくれとしつこく言う。彼女に、精神安定剤もあるから飲んでけと言う。
俺はそのまま言葉に流されてしまう。