業(2)

921 :916:2008/11/12(水) 10:31:55 id:VFmdt4PO0
曾爺ちゃんは、「供養はするが、あなた方は供養でどうにかなると思っているのかね?」って話したらしい。
しかし、他に当たっても、祟りがあってからは供養さえ怖がってしてくれないから、お鉢が回ってきたらしく、
どうしても供養はして欲しいって事で、曾爺ちゃんは供養することにした。

お墓の位置は、村外れの山道を進んで行った山にあるらしく、
昔はそこに寺が有ったが、廃寺となった後は、そのまま村の墓地として利用しているとのこと。
案内されてそこに近づくにつれて悪寒がしてくるし、案内していた当代はどんどん顔色が悪くなってくる。
これは半端じゃないって思い、とりあえず墓の方向に向かって経をあげて様子を見たが、
どうにもならない感じなので、ある程度の道筋を聞いて当代を帰したそうだ。

当代に活を入れて返した後に暫く進むと、何かにすれ違った。
曾爺ちゃんには姿は見えなかったが、多分彼女らの誰かだろう。
その気配は当代を追うわけでもなく、また、自分を追う様にも感じなかったので、
気を落ち着けながら先へ進むことにした。

山の斜面を這うように進む山道を歩いていくと、開けた場所があり、
斜面にそって卒塔婆や墓石が並んでいるので、ここがその墓地だろうと感じて中に入った。
すると、多くの盛り土の墓の内に、この墓がそうと判るくらいの存在感がある墓が3つあったらしい。

曾爺ちゃんはそこで経をあげて供養を試みたが、ずっと空気が重く、どっからか視線をずっと感じる。
「無理だな〜業が深い」と思って、屋敷まで引き上げたる事にした。

922 :916:2008/11/12(水) 10:32:56 id:VFmdt4PO0
屋敷まで戻った曾爺ちゃんは、当代に「供養試みたが、このままでは祟りは収まらない」と言った。
そして、
「あなた方は業が深いので、言えないことも多いと思う。
 三人を死なせたのにも関わっているだろう。
 しかし、祟りが無かったものが何故祟る様になったのか、何でも話せる事があれば言いなさい」
と言ってみたそうだ。

当代も言い辛かっただろうが、話した内容はこうだった。
父にあたる先代は、乱暴で狡猾な人物だったそうで、若い頃から問題ばかり起こしていたそうだ。
それでも、先々代が存命の内はまだマシな方で、先々代が亡くなると、素行に歯止めが効かなくなった。
多くの村人を巧妙に利害で巻き込みながら悪事を繰り返し、
村では誰も逆らうことが出来なくなってしまったそうだ。

祟っている3名の死にも、先代は関わっているらしい。
それから先代は、三年前に実の妹に殺害された。
多分これが、最初の祟りじゃないかとのこと。
そして祟りで死ぬ前に、あの3名の女性と関わりのある男に罪を着せて殺している。もちろん私刑だ。
それ以来村では、身内や血縁者を殺してしまう事件が時々起こるようになった。


923 :916:2008/11/12(水) 10:34:46 id:VFmdt4PO0
曾爺ちゃんはこの話を聞いて、その殺された男をまず供養しないとこの祟りは収まらないと思ったらしく、
墓の場所を訪ねた。
当代の答えは、「墓はない。埋めただけになっている」と話し、埋めた場所に次の日に行くことになった。
曾爺ちゃんは、その晩は屋敷には泊まらなかった。
明日の事を考えたら、ここで気力を消耗したくないって気持ちになったらしい。

次の日、当代と村の男数名に案内されて、その男の埋まっている場所に出かけると、そこは村はずれの藪の中だった。
ジメジメと腐った枯れ草が覆い被さり、枯れ草の隙間から育ちが悪い感じの雑草が生えている。
そこに高さの余りない盛り土があり、近くには申し訳程度の供え物が朽ちていた。
曾爺ちゃんは、「ちゃんと埋葬し直して供養しなといけない」と当代に言って、掘り返させた。

大して掘り返さないうちに死体は現れ、出てきた死体はやはり普通の状態ではなく、無惨に切り刻まれていて、
五体ばらばらどころか、肉片がいくつも出てきたらしい。
ただ不思議な事に、三年前に死んだはずの死体は、腐敗せずに湿り気を帯びていたそうで、
曾爺ちゃんは、呪物になっているな、と感じたそうだ。


924 :916:2008/11/12(水) 10:35:35 id:VFmdt4PO0
この辺の詳しい理屈は、爺ちゃんには分からないらしいが、
多分殺された男は、3名の女性を弔っていた者で、そのことで3名の霊的な干渉良くも悪くも受けていた。
しかし殺された後は、本人の無念も重なって、3名の祟りの呪物化したのではないか、って感じの話をしていた。

とにかく曾爺ちゃんは、男の遺体から頭髪の一部を切り取った後は、
全てカメに詰めて埋め直し、経をあげて供養した。
供養といっても、成仏させた訳ではないらしいが、
成仏させるわけにもいかなかったので、その地で安息できるように色々したようだ。
頭髪の一部を切り取ったのは、業が深すぎる件なので、関わった自分への祟りも有ると思い、
この男を、自分も供養しないと危ないと思ったかららしい。

曾爺ちゃんは、当代にこんな注意をして別れたそうだ。
・あなたの直系は、子々孫々まで男の命日の供養を欠かさないこと。
・3名の墓を除いた墓地にある他の墓を、村の近くに移すこと。
・墓を移したら、誰も3名の墓に近づかないこと。
・祟りや3名の霊が現れることがあったら、男の墓に供物を捧げ助命の願をかけること。