触れてはいけないモノ(1)

576 :通りすがりの名無し:2006/12/13(水) 18:31:56 id:pf1GsXTF0
そろそろ年末、旅行シーズンなので、自分が体験した旅行での怖い話を一つ。

中学の時の修学旅行で京都へ行った。
夕食、風呂も終わって、旅館で寝るまでの自由時間を楽しんでた時だった。
俺は右隣の部屋に仲の良い連中がいるので遊びに行った。

俺達は定番のトランプやらウノやら一通り遊んで、飽きはじめた頃、
誰かが「怖い話をしようぜ」なんて事を言った。
部屋の明かりを消して、中央に10人ほど集まり、1人目の話が始まった。

2人、3人・・・4人と話は進んで行き、次はA男の番だった。
「安い旅館や修学旅行で使われる部屋って、でるんだよな!
 御祓いの為にお札が、絵やツボの裏、押し入れの中に貼ってあるんだってよ。
 探してみようぜっ!」
怖い話を期待してたのでシラケつつ、部屋中の捜索が始まった。
実際にあったらあったで面白いし、何よりありそうな感じがした。


577 :通りすがりの名無し:2006/12/13(水) 18:34:06 id:pf1GsXTF0
絵やツボの裏側、押入れの中はもちろん、テレビの下などあちこち探したけど、結局何一つ出てこなかった。
そのうち、どこかの部屋で始まっていたマクラ投げが伝染してきて、この部屋でもマクラ投げ大会が始まった。
だんだんエキサイトしてきて、布団を投げ始めたりプロレスごっこになったり、
修学旅行の夜というのを満喫していた。

「おっ?」
少し遊び疲れた頃、A男が天井にある点検口を見つけた。点検口ってわかる?
天井裏に入るための入口で、普通の家だと洗面所あたりの天井についてるやつ。
そこの旅館は、なぜか部屋の端っこの天井についていた。
A男は悪いやつじゃなかったが、ちょっと度が過ぎてしまうタイプだった。
「おぃ、あんなか入って見ようぜ!隣の部屋まで行けるんじゃね?」
暗所、閉所恐怖症の俺は断固拒否した。他の連中も、疲れただの汚れるだので拒否してた。
「なんだょ、じゃ俺が入ってみっから馬になってくんね?」
3人で2段の馬を作り、A男が点検口を開ける。スムーズには開いたが、パラパラと埃が落ちてくる。
たぶん長い間使われることが無かったんだろう。開いたその先には真っ暗な空間が広がっている。
「なんだよ、くれーなー」
A男が中に頭を突っ込んでしゃべってる。中が明るいとでも思ったのだろうか。
「あ・・・・」
何かを見つけたのだろうか、A男が声を漏らした。


578 :通りすがりの名無し:2006/12/13(水) 18:36:18 id:pf1GsXTF0
「おぃなんかあったぞ!」
と言いながら、A男は両手を穴の中にあげたまましゃがんで、頭だけを暗闇の中から出した。
穴が小さいため、手に持っているものと頭を同時に出せなかったんだろう。
手をゆっくりと、暗闇の中から明るいこちらの世界へ戻す。
手に持っているものが見えたとき、その部屋の中にいる人達の動きが一瞬止まった。
「うゎぁぁ!なんだこれ!」
天井裏は暗くて、A男にはそれが何なのかまったく分からなかったんだろう。
分かっていれば、それを取ろうなどとは考えもしなかっただろうに。


579 :通りすがりの名無し:2006/12/13(水) 18:39:26 id:pf1GsXTF0
A男が天井裏から見つけた物は、赤い柄のついた、和紙でできた折り人形。御札。それと小さな赤い本だった。
長い年月置かれていたからなのか、人形の表面はほこりで黒く汚れ、
御札はかろうじて文字が読める程度にまで古びていた。
小さな赤い本は、ポケット辞書ぐらいのサイズで、赤黒くなった表紙には、なにやら文字が書いてあった。
A男は驚いた拍子なのかわざとなのか、周りにいた人達にそれらを投げつけた。
もちろん誰も受け取ろうとはせず、本はバサっと畳の上に落ちた。
人形は和紙で作られていたせいか、ヒラヒラと舞い落ちて、部屋の隅のほうへ落ちて行った。
片方の手と足を畳に、もう片方の手で壁をささえ、偶然なのかナナメに立った。
御札もヒラヒラと舞い落ちて、人形のあとを追うように畳に落ちた。
心なしか、人形はA男を睨みつけているように見えた。


580 :通りすがりの名無し:2006/12/13(水) 18:40:55 id:pf1GsXTF0
A男は馬から飛び降りて、再び人形を手に持ち、また俺たちに投げてきた。
たぶん、自分でもやばいと思ったんだろう。
その気持ちを誤魔化すかのように、静かになったその部屋で、半笑いで人形や本を投げつけてきた。
A男以外、誰も言葉を交わさない。引きつった顔で、人形と本から逃げまくる俺達。
B男「それ、やべーから元に戻せって!」
他「うん、うん」
ついにB男が口を開いて、それらを元の位置に戻すように提案した。
A男もすぐに、元に戻すことに賛成した。

A男は人形と御札と本を拾い、軽く埃を払って「ごめん」と呟いて、天井裏の元の位置に戻した。
テンションも下がり、就寝時間も近かったため、みんな各自の部屋に戻っていった。
俺は隣の部屋、A男はさっきまで遊んでいた、あの人形のあった部屋だ。