マガツジ竈タイの山奥(1)

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ほんのりと怖い話スレ その93

『マガツジ』
532 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2013/04/08(月) 19:01:56.63 id:HmoRQwfq0
知り合いの話。

彼の住んでいる集落の山には、細くて長い農道があるのだという。
そこを歩いていると、よく自分を失うらしい。
心ここにあらずといった感じになり、道の上にただ呆然と立ち竦んでしまう。
鳥の声などでハッと我に返ると、軽く数時間が経過しているのだとか。
その道は、地元では『マガツジ』と呼ばれているそうで、一人でいる場合は通らない方がよいとされているそうだ。
「俺、そこは何度も軽トラで通ってるけど、変な体験をしたことはないよ。
 というか皆が言うには、車とかに乗っていると大丈夫らしい。
 いや、用もないのに、わざわざ歩いて通ろうとは思わないな。
 だってそんな体験しちゃったら、何か嫌じゃないか」
そう言って、彼は肩を竦めていた。



『竈』
533 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2013/04/08(月) 19:02:42.57 id:HmoRQwfq0
親戚の話。

幼少の時分、薪で風呂水を沸かすのが彼の仕事だった。
裏山に干してある薪を母屋まで持っており、そこで割ってから火を点けていたのだという。
竈の火を見ながら、よく昼間獲ったイナゴを竹串に刺して炙っていた。
おやつ替わりに囓っていたのだという。

その日も何匹目かのイナゴを串に刺し、火の中へ突っ込んだところ、いきなりグイと強い力で引かれた。
「あっ」と思う間もなく、イナゴは竹串ごと竈の中へ引きずり込まれた。
しばらく火を睨んでいたが、別に何の異常もなかった。
しかし気味が悪くて、その日はそこでイナゴをつまむのを止めた。
風呂は問題なく沸かせたということだ。

「その後も何回か、竈にイナゴを盗られたよ。
 でもまぁ、馴れちゃったというか、気にしなくなっていたな。
 小学生に上がる頃には灯油の給湯器になったから、あの竈も潰してた。
 あれって一体何だったのかな」
彼は懐かしそうな顔でこの話をしてくれた。



『タイの山奥』
534 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2013/04/08(月) 19:03:36.02 id:HmoRQwfq0
私の体験した話。

団体の事業でタイの山奥に行った時。
村長の家で宴会となり、夜遅くまで大勢の日本人とタイ人が唄って騒いでいた。
酒が呑めない私はグデグデになり、一人でホームステイ先の家へ帰ることにする。
フラフラと歩き出したが、そこは酔っ払いのこと、まともに歩ける訳がない。
階段に向かわずに、高床の段差から足を突き出すと、そのままパッと真下に消えてしまったらしい。
「あぁ、落ちた!」と仲間が慌てて、一メートル以上は低い土間を確認したが、
そこには鶏が走り回っているだけで、私の姿はもう見えなかったとか。

心配した仲間の一人がホームステイ先を尋ねると、私が蚊帳の中で大の字になって爆睡していたそうだ。
「真っ暗だったっていうのに、よく川にも落ちずに帰れたな」
翌朝、目が覚めると口々にそう言われた。
村長の家からホームステイした家までの間に、かなりの幅のある川があったのだ。
蔓で出来た吊り橋を渡らなければ戻れないので、確かによく落ちなかったものだと自分でも思った。
一生懸命記憶を辿ると、誰かに手を引いてもらって誘導された憶えがある。
ただ、それが誰なのかは結局思い出せなかった。
現地の村人やスタッフに聞いても、誰もそんなことはしていないという。

その村にはもう二日滞在する予定だったので、それ以上気にしないように努めた。
考えすぎると、何か怖いことを思い出しそうな気がして。
事業は無事に終わり、私もそれ以上変わった体験はしなかった。

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