守護霊(1)

原著作者「怖い話投稿:ホラーテラー」「まほろばさん」 2008/07/27 19:00

あまりにも私の周りで不運が続いていた。
記憶にあるうちでは、飼っていた犬が車にはねられて死んだのが最初。
姉が会社をクビになる。兄が離婚する。父が倒れる。祖父が死ぬ。私も車にひかれて入院。
些細なことを挙げればきりがない。いくらなんでもツイてなさすぎる。

見舞いに来てくれた大学の友人が、私を見るなり「憑かれてるね〜」と一言。
その友人は霊感があるらしく、私のすぐ隣りにドス黒いのが見えるという。
「でもね」
友人が続ける。
「あんた守られてるよ。あんたに憑いてるのと、あんたの守護霊が闘ってる。
 その守護霊いなかったら、とっくに死んでるよ」
守護霊と聞いたとき、母のことだと思った。
私が小学5年生のときに病死してしまった母。もうおぼろげな記憶しかないが、優しかった母。
死んでも私を守ってくれてるんだ。

退院した後、本当に久しぶりに母の墓参りに行った。
最後に墓参りに来たのは三年以上前だったか。
墓に線香を立てて、
お母さん、守ってくれてありがとう。どうか、私たちのことを守ってください。

それから、私の周りで不運なことが起こらなくなった。

見舞いに来てくれた大学の友人に会うと、
「お〜、守護霊さんがやっつけたみたいだね」
「ホント!?…お母さん、ありがとう」
そう言ったとたん、その友人がギョッとした。
「…あんた、見えてたの?」
「見えないけど、守護霊って私のお母さんでしょ」
友人は少し黙っていたが、私に本当のことを教えてくれた。
「あんたに憑いてたのは、あんたの母親だよ。そして、守護霊は犬だね」

誰も仏壇の前で手をあわせず、誰も墓参りに来なくて、なりたくもない悪霊になってしまった母。
それから私は毎日線香をあげ、月に一度必ず墓参りに行っている。